『NETFLIXオリジナルシリーズ』4作品を見た所感

 地上波のみで良質なアニメの供給を受ける時代は終わったのかもしれない。

 NETFLIXにおけるオリジナル作品の配信形態は日本のアニメの未来を示していると言っても過言ではないでしょう。

 

 今年に入ってからのNETFLIXの作品展開には目を見張るものがあります。というのも、NETFLIXのオリジナルブランドを育てるために、アニメ分野にも巨額の予算を投じているようで、2018年だけで国内外問わずオリジナルアニメ30作品の配信が決定していることからも、その熱の入りようが伝わってくるかと思います。

 2015年9月1日から日本でもストリーミングサービスを開始したNETFLIXですが、amazonプライムdアニメストア、huluやU-NEXTといったラインナップの充実した配信サイトが多数存在する中で、国内での利用状況は余り芳しくないと言えるでしょう。僕の周りのアニメファンでも利用している人はほぼ存在しないのが現状です。

 しかしながら、他の配信サイトにラインナップで勝てなくてもここでしか見れないオリジナル作品に熱心なアニメファンは食いついてくれると確信めいたビジョンを持っているNETFLIXには、投資のし甲斐があるというものです。現に、手広くアニメを扱っている配信サイトへの登録に加えて独自性が光っているNETFLIXにも登録してしまっている僕がいます。

 地上波では放送されないマニアックな作品を見られるのであれば、月額650円以上を支払うことに意を介さないアニメファンからは、十二分に評価を得ていると思います。

 

NETFLIXのオリジナルアニメの特徴

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 NETFLIXのオリジナルアニメが現行の他のアニメと大きく違う点は、その製作の在り方です。日本のアニメでは、テレビ局や出版社、おもちゃメーカーといった様々な業種の複数の企業がお金と意見を出し合って一つの作品を作り上げる製作委員会方式が主流です。一方、NETFLIXのオリジナル作品は、簡単に言えば配信会社とアニメ制作会社との直取引による方式を採用しています。そのため、製作委員会方式よりも柔軟で突拍子もない作品が生まれやすい環境にあると疑いようもないです。具体的には、放送枠における番組構成上の時間的制約に縛られない点や、暴力描写や性描写に寛容である点が挙げられます。前者においては、コマーシャルや終了時間を気にすることなく絶好のタイミングでEDを迎えさせることが出来るメリット、後者においては、製作委員会に文句を言われることなく自由な表現で伸び伸びと描き切れるメリットがあり、面白い作品が醸成される土壌が整っていると言えましょう。

 ところで、製作委員会方式アニメ制作会社だけでは先立つ資金を調達できないために生まれた苦肉の策的な一面の強い手法ではありますが、最近は何かと悪の枢軸として語られる場面が多い気がします。ただ、僕は製作委員会を一概に悪だと捉えてはいません。何故なら製作委員会方式でも面白い作品はいくらでも存在するから。NETFLIXにも完成保証という完パケ納品されてからしか報酬金が支払われない負の側面があり、先立つ資金を補えないという点では、製作委員会方式はまだまだ活用されていくことでしょう。

 

NETFLIXオリジナルシリーズ』4作品を見た所感

 さて、いよいよ本題に入ります。NETFLIXで現在配信されている『NETFLIXオリジナルシリーズ』と冠されたアニメは四つあります。

 1月5日に配信開始した『DEVILMAN crybaby』、3月2日に配信開始した『B: The Beginning』、3月9日に配信開始した『A.I.C.O. Incarnation』、3月23日に配信開始した『ソードガイ The Animation』の四作品。

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 僕もようやく四作品を見終わりましたので、順を追って所感を記していきたいと思います。

 

DEVILMAN crybaby

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 ご存知、永井豪先生の名作『デビルマン』を湯浅政明監督が現代版アレンジを加えて再構成した作品ですね。全10話。

 1月からの配信でしたが、何気に僕は渋谷で開催された試写会に参加していて、サバトを模した特設会場で1話だけ先んじて拝見していたり。あの臨場感は忘れられません。

 当時を出来る限りそのまま再現したという触れ込みの『THE FIRST』が発売中で一体何冊出るんだと思わなくもない原作の完結まで描かれたのは今回が一応初であり、新デビルマンを含む加筆修正分や『バイオレンスジャック』や『デビルマンレディー』に続く部分はカットされた純粋な『デビルマン』であると言えてしまうのが悲しくもあります。

 まぁどれだけ忠実に再現したとしても文句を言いたくなるのが懐古厨の宿星なので許していただきたいのですが、不良がラッパー、謎のゲイが登場する、ススムくんは登場する、ゼノンが反逆する、牧村夫妻の行く末が違うなど変更点が多すぎて、これはこういうものと理解して見進めていったら、結末は原作の展開に沿っているという謎の帰結を見せて無事悪魔化してしまいました。

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 永井先生の悲願であったシレーヌの空中ファックが別の形で実現していて表情も凍りましたが、それ程までに何かを掻き立てられる作品にはなっていたと思います。

 原作とは別の意味で「やべえもん見ちゃった」感を味わえる逸品と言えます。

 

『B: The Beginning』

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 中澤一登監督とProduction I.Gが手掛ける異能力バトルと犯罪捜査をガッチャンコさせた感じのアニメです。全12話。

 西尾鉄也さんや黄瀬和哉さん他IGの粋を結集したような作画が拝めるのはアニメファン的に美味しい点だと思います。

 上手く海外ドラマの要素を日本のアニメにマッチさせたなと思う反面、手放しに誉めると海外かぶれと指を刺されそうで、扱いに困る位置づけではあります。

 押井塾で提案された作品かと見紛うくらい設定も凝っているので、一回見ただけでは把握できない部分もあって、でも何度も見るといよいよ海外かぶれなので、自粛します。

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 神の復活を目前としたファウラ・ブランカ王立科学研究所が襲撃されたのも、研究が終わるとレジーの軍事転用が出来なくなると踏んだからなのでしょうか。

 あと根本的なところで、ギルバートは元々どこに所属していて、王立法医学研究所とファウラ・ブランカ王立科学研究所の関係は一体何なのでしょう。

 僕の疑問を解決する上でも、有識者の方におかれましては、早々に見ていただきたい所存です。

 

A.I.C.O. Incarnation』

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 BONES制作のアニメ。監督の村田和也さんとキャラ原案の鳴子ハナハル先生といえば『翠星のガルガンティア』が連想されますが、同じく村田監督が研修生時代から温めていた作品のようです。

 脳以外の身体の部位が人工生体になった女の子が元の身体を探しに行くSFアニメ、かと思いきや後半にどんでん返しあり。

 全12話の中で言ってることコロコロ変わって非常に分かり辛いのが難点ですが、状況を整理して疑念を解消していくのを楽しむプロセスは往年の名作SFに通じるものがあります。

 代謝や自己修復を実現したプログラムであるセル・アセンブラや筋肉や皮膚を補強するカーボン・ナノ・ストラクチャーなどの横文字が飛び交い、難解であればあるほど涎が垂れてしまう人種には丁度良いのかもしれません。

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 あとパワードスーツが好きなら見て損はないと思います(重要)。

 

『ソードガイ The Animation』

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 サイエンスSARU、Production I.GBONESと来て次はGONZOの作品か?と無駄な期待がなかった訳でもないですが、ランドックスタジオが担当という運びになりました。

 井上敏樹さん原作、雨宮慶太さん原案というビッグネームが揃い踏み、今最も熱い月刊誌と目される『月刊ヒーローズ』連載漫画のアニメ化です。

 実は上の三作と違ってこの作品は、製作委員会方式を採用しています。というのも出自が特殊で、元々2014年くらいからアニメ制作発表がなされていたのが、延期に延期を重ねて、気付くとNETFLIXでアニメ化をしています。アニメ化を企画したDLEがIGに話を持っていき、最終的にランドックで制作するという複雑な経緯を経ており、そもそも原作付きということで、NETFLIXオリジナルシリーズではありますが、先行配信的な意味合いが強いのかもしれません。

 ということで念を押しておきますが、早速実例があるように製作委員会方式が滅びることはほぼあり得ないと思って良さそうです。だって資金調達大変だもん。

 それはさておき、作品の中身についてですが、個性的なキャラクターが犇くように出てきて12話を通して飽きさせません。

 というかOPにまだ出てきてないキャラが沢山いたような・・・。

 終わり方も続きがあること前提で、特に続編の制作はまだ発表されてない行き当たりばったりな方針とか、言ってしまえば凄まじいB級オーラを放っています。

 でも、そこが良い!

 同雑誌連載作品で現在放送中の『キリングバイツ』と同じ空気感が漂っていて、ギャグみ溢れる豪胆な展開力にたじろくこと間違いなし。

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 CV佐倉綾音さんの生意気なJCアイドルがファンのオタクにボコボコに殴られるシーンなんか最高の一言に尽きます。

 

 最後に

 これだけ高火力な作品を立て続けに配信できるのは『NETFLIXオリジナルシリーズ』最大の強みだと思います。

 その反面、1話1話のカロリーが高いので1クール分見るだけでも、ある程度まとまった時間を捻出する必要があるかと。

 三作品が一挙に配信を開始した3月はそれはそれは途方もない目まぐるしさで、休暇を無理やり捻出して何とか全部見ることが叶いました。

 いつでもどこでも見られるというのがネックになっていて、週一の放送形態に慣れてしまった我々アニメオタクにとって、一気に全話配信されると重くて溜めてしまう傾向にあるような気がします。

 でも手を拱いていたらあっという間に出遅れてしまいます。「この週のこの休暇はこのアニメを見る」と腹を括って挑むしかありません。時間を作って、アニメを見るんです。

 まだNETFLIXに登録していないのでしたら、1ヵ月は無料期間なので、今すぐ登録して、『NETFLIXオリジナルシリーズ』をご覧になられた方が良いと思います。

 NETFLIXの国内のシェアが少ない現状で、素晴らしい作品を発掘するパイオニアになれるチャンスが目の前に転がっているのです。

 

 日本のアニメが新たな形態に移行していくかもしれない、時代の岐路に差し掛かった2018年、アニメ業界の未来を牽引していくのは、NETFLIXでオリジナルアニメを開拓する、あなたかもしれない。

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