『URAHARA』の10話に感銘を受け、ふと気付くとブログを投稿していました

 突然ですみませんが、皆さんは今期放送中のアニメ『URAHARA』をご存知ですか?

urahara.party

 一昨日放送していた『URAHARA』の最新話も素晴らしかったですね。

 頭で考えるよりも先に身体が動き出してしまう、反射神経に訴えかけてくる面白さとでも言いましょうか。

 何時何処に居たとしても、「あぁ、今期って『URAHARA』というアニメが放送してるんだよな」と常に思い浮かべずにはいられない、そんな異様な引力を持つ作品です。

 ところが、個人的に大注目している『URAHARA』ですが、何故か知名度が低いように感じます

今期はこんな面白いアニメが放送しているんだと知っていただき、あわよくば見て何かを感じ取って貰えると幸いに思います。

 

そもそも『URAHARA』とは何なのか?

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 一見するとアニメオリジナル作品であるかのような面構えの『URAHARA』ですが、実は原作が存在します

 『PARK Harajuku: Crisis Team!』という「クランチロール」で連載しているイラストノベルで、ストーリー原案はパトリック・マシアス氏と、キャラ原案はたなか麦氏が分担して制作されています。

 有識者の方々におかれましては「クランチロール」の説明は不要かと思われますが、参考までに述べさせていただきたくと、世界中にシェアを持つアニメ配信サイトで、日本のアニメ会社と提携することで日本で放送された数時間後には公式配信される優れた特徴を持っています。

 最新作の放送もカバーされている上に料金体系も非常にリーズナブルで、「Amazonプライム」や「dアニメストア」といった日本の動画配信サイトを揺るがすような存在であるため、日本ではアクセスが禁止されています

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 この『PARK Harajuku: Crisis Team!』は、「クランチロール」で連載しているため、基本的には日本では見ることが出来ない上に、英語によるイラストノベルであるために、アニメ化するまで作品を全く知らなかったという方も多いのではないかと思います。

 原宿を舞台にした日本の文化を発信するコンテンツを謳っておきながら、日本では閲覧不可という矛盾を孕んでおり、そういった原作に手を出す際の構造上の不親切さはオタクとしてニヤけてしまうポイントではないでしょうか。

harajuku-crisis-team.tumblr.com

 どうしても日本で読みたい!という方には、キャラ原案のたなか麦氏のホームページにて全話公開されているので、英語版はそこで確認するといいかも知れません。

 珍しいメディア展開をしている本作に俄然興味が湧いて来たけど英語はハードルが高い!という方もいらっしゃるかもしれません。

 そんな方には朗報ですが、なんと日本語訳された書籍が日本のとあるお店のみで販売しています。

 原宿に存在する「2.5 spinns」内にある「PARK」というインショップで、タイトルの由来にもなっているサブカル関係を取り扱ったお店です。

www.park-harajuku.com

 一応通信販売も行っており、現在は購入できるようですが、一時期完売となっていて、店舗に訪れるしか入手できない事態となっていて、市場外流通が浸透した現代社会にあるまじく恐ろしく原始的な販売経路を採用しているものだと感心していました。

「PARK」は、日本で唯一『URAHARA』を取り扱っているお店という趣向以外にも、オタク要素を取り入れつつ原宿ナイズされた、独特の雰囲気を帯びたお店の内装はとても斬新ですので、直接店頭に行かれるのも一興かと思います。

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 内容も、文化を奪う侵略宇宙人と戦う根底こそ同じであれ、アニメと大きく異なる展開を見せていますので、一読の価値はあると思います。

 登場人物の出身地や家族の事情など、アニメでは触れられていない設定が詰まっていて、『URAHARA』を語る上で外せない一冊です。

 残念ながらchapter1のみの収録であり、「クランチロール」で配信されているchapter2以降は、英語で読むしかありません。

 異星人に捉われた仲間の一人を救うため、終わりなき戦いに挑む怒涛の展開が待っていて、こちらも目が離せません。

 

URAHARA』の所見(前半戦)

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 さて、話を元に戻しますが、ここでアニメ『URAHARA』をこの期に及んでご覧になられていない方々にあらすじをざっくりと紹介いたします。

 突如地球に出現した侵略宇宙人が、東京タワーや浅草寺など地球人の文化的な財産を次々奪っていき、世界の都市機能は壊滅状態に陥れます。

 そんな混沌とした世界情勢の中で、原宿にお洒落なお店「PARK」を構える三人の少女がこの物語の主役。三人は原宿で、宇宙人の出現と時を同じくして、アメリカから来たという一人の少女と喋るエビフライに遭遇し、変身アイテムを貰い、宇宙人と戦う力を手にします。

 さて、事態を重く捉えた国際防衛隊は、宇宙人が今攻め込まんとしている原宿に爆弾を投下し、主人公の三人はてんやわんやしますが、巨大なパフェのモニュメントの出現とともに爆弾も消滅し、原宿を震撼する未曽有の危機は去ります。

 文章が難解な方向になってきたので短く纏めると、三人の女の子が原宿で宇宙人と戦うアニメです。

 いかにも怪しいエビフライを首に巻き付けて、取って付けたような「ですな」口調がとても可愛い女の子の存在もお忘れなきようお願います。

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 その後も宇宙人は手を変え品を変え原宿に攻め込み、その度に主人公の三人が撃退します。

 ここが衝撃ポイントの第一弾で、倒した宇宙人を三人は何の気兼ねもなくパクパク食べます

 宇宙人は爆発四散するとお菓子のような形状を取るのですが、「女の子は甘いものが大好き」なんて言いながら、それはもうパクパク食べます。

 見るからに不穏な光景ですが、そもそもインベーダー系のSFとメルヘンチックな絵柄が化学反応を起こしていて、違和感なく受け入れてしまうのがこの作品の恐ろしい点です。

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 遂に、というかやっと宇宙人をパクパク食べていたツケか回ってくるのが7話くらい。

 宇宙人を食べさせていたのは実はエビフライ達の仕組んだ罠で、クリエイティブする能力の高い生命体を自身と同じ存在にして、その能力を得たことにしようとしていました。

 他の星の生命体をそれごと自身の種族に取り込んでいく宇宙人という突然のハードSF設定を押し付けられて、困惑した視聴者も多かったと思います。

 僕自身、『URAHARA』を視聴する時は、他のアニメと一味違う緊張感が走りますし、意外に見ていて疲れるのですが、そんな部分もまた良いん...ですな。

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 自身の身体の変化にもお構いなく、気が狂ってしまったかのように宇宙人を食べ続ける二人に対し、唯一正気を保っていた主人公は、現在置かれている状況に戦慄してしまいます。

 頭がおかしくなったのは二人だけに留まりません。主人公たちに的確な助言を与え、彼女たちの作品の一番のファンであった、この作品の良心といっても過言ではないクレープ屋さんも含め、原宿の人々が全て狂気に侵されていきます。

 巨大化したクレープ屋さんは、主人公も狂気の世界に誘うため、邪念となっている三人の思い出の詰まった「PARK」を破壊しようとしますが、すんでのところで主人公に召されます。

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 唯一の良心だったクレープ屋さんにも裏切られ、しかし絶望の中でも立ち止まらないのが主人公たる由縁。毒を以て毒を制すの要領で、自分も二人に勝る気の狂いようで宇宙人を貪ることで、二人を我に返らせる作戦に出ます。

 主人公の忠告を無視し続けて宇宙人を貪っていた二人も、主人公の変わり果てた姿には度肝を抜かし、流石に冷静になります。

 作戦が功を奏し喜ぶべきシーンではあるのですが、一緒にどこまで堕ちていくと意を決して臨んだのに、他の二人はドン引きしていたのは流石に世の中の不条理を感じましたん...ですな。

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 主人公の決死の努力により、幻想から解き放たれ、宇宙人化が進行していた三人はふわっと元通りになります。

 どうやら宇宙人を食べると理想の自分を体現できる幻想を見るようで、自分がなりたい、叶えたいと思う気持ちに背を向けて幻想の世界に浸るのではなく、自分の気持ちと正面から向き合う事で、宇宙人化が解除された模様です。

 宇宙人と戦うための変身アイテムを捨て、ありのままで生きようとする少女たち。どこまでも尊い三人の絆を前に、ほだされる少女と、怒るエビフライ。

 物語は最終局面を迎えようとしています。

 

URAHARA』の所見(後半戦)

 地球人のクリエイトする能力に目を付け、その力を奪いに来た侵略宇宙人にさんざ手を焼かされた前回までの『URAHARA』ですが、最新話の10話にて衝撃にさらに衝撃を重ねて来ます。

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 他の星の文明が生み出した吸引装置で、主人公たちを新鮮な状態で宇宙に連れ帰ろうとするエビフライ。

 何を隠そう彼らの目論見は、自らは何も生み出す術を持たないがために、数々の星の文明を根こそぎ奪う事であり、通った後には何も残らないという、厄災のような存在です。

 進化の停滞を避けるために退くに退けない宇宙人側ののっぴきならない事情もあるようですが、文化を奪われた地球人は溜まったものではありません。

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 三人を捕縛しようとするエビフライの前に立ち塞がる女の子。

 前々から黒幕だのラスボスだのと囁かれておりましたが、なんと侵略宇宙人のお姫様的存在だと判明します。

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 明かされるのは、女の子とエビフライが地球を訪れる前の話。

 ピンク髪の幼女姿は世を忍ぶ仮の姿であり、本来は他の個体と同様に円盤の形状をしています。

 大群で他の星に攻め入っては文化を略奪し、宇宙船には他星の文化的アイテムが山積みとなっています。

 お姫様はいつものように奪ってきた文化的アイテムを謁見し、初めは興味を持つものの、すぐに飽きてしまいます。

 僕がハンドスピナーに初めて触れた時もこんな感じだったので、個人的に彼らにはとても共感が持てます

 (ちなみにこのシーンではまだ訪れてない地球産の和菓子が宇宙船に転がっていましたが、異星人が地球を訪れてお土産に持ち帰ったのでしょうか...)

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 独創的な地球の文化に興味を持ち、次に訪れる星を地球に定めた侵略宇宙人は、観光雑誌を参考に品定めを開始します。

 ここでしれっと重大な事実が描かれている訳ですが、地球に潜伏するために用いた資料は局所的、それもかなり偏向的な情報をインプットしていたことが判明します。

 エビフライへの擬態は、たまたま名古屋の観光雑誌を見たためという勘違いの方向性も実に異星人らしくて好きです。

 今までも雑誌の情報を鵜呑みにして実際に訪れてみるとイメージと違うとなってしまう弊害が発生してしまいそうなものですが、他の星では画一化された文化しか存在し得なかったのでしょうか。

 あと何気にこの回想シーンは、雑誌の記事の中にあった飲食店の宣伝の文言から、個体識別のための名前を着想した衝撃の事実も盛り込まれている、設定放出のオンパレードでした。

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 原宿で地球の潤沢な文化の一端を垣間見、歓喜する侵略宇宙人のお姫様。

 名古屋を地球の標準と認識した彼らが、原宿に降り立った時に何を思うのかは、意見の分かれる所だと思いますが、少なくとも好意的に捉えられたようで一安心です。

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 そこで主人公たちと出会い、自ら物を作り出す楽しさに触れ、お姫様は少しずつ変わっていたのでした。

 クリエイトする能力の高い三人と時間を共有することで「素敵になりたい」という思いを育んでいったお姫様は、素敵なものを奪うのではなく、素敵な姿に自分がなるという、自発的な考えに至り、エビフライと対峙することになります。

 奇しくもツインテ娘が前回まで創造力の行き詰まりに悩み、自分なりの答えを導き出したのと同じ構図になっていて、今までの積み重ねが活きていると実感できる感動の一幕です。

 「自分にとってクリエイティブとは何か、なぜ作りたいと思うのか、何のために作るのか、考える物語」を謳ってきた本作にあって、物語の落とし所として充分過ぎる展開だとは思いますが、それで済まないのが『URAHARA』の凄い箇所です。

 

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 主人公たち三人のクリエイトする能力は、地球人類として持て余す程に高いものでした。

 人一人が対応できる容量を超える事態に遭遇した時、その絶大すぎる能力が暴走を来し、原宿の街全体を作り変えていたのでした。

 元は宇宙人の侵略と国防軍の応戦によって原宿が壊滅することを憂い、原宿を守りたいと三人で願っただけだったのに、自分たちに都合の良い世界を再構築していたのだと、お姫様の口から聞かされ、茫然自失とする一同。

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 お姉さんたちのイメージする力は本当に凄いんですな!さゆみんさんもゼロから作って、自分たちで殺して!」という台詞はこの作品に潜む狂気を具現しているように思えます。

 絶望から立ち直り一度は救済の兆しが刺した前半から一転して、お姫様の台詞で奈落のどん底に突き落とされる感覚たるや。

 三人の有るがままを認めてくれて、時には的確なアドバイスをくれたさゆみんも、原宿の人たちも全て、空想の産物と発覚して、次回に続く構成はまさに生き地獄です。

 ただ、上昇と落下を繰り返す遊園地の絶叫アトラクションのような不快感に混じる爽快感は、嫌いじゃないです。

 力任せにブンブン振り回され、気を抜けば身体が持っていかれそうになるのが、寧ろ気持ち良い。

 これまでも衝撃の連続で感心されられっぱなしでしたが、さらに最新話の予想を上回ってくる展開の激流には、成す術もなく呑み込まれてしまいます。

 外国産という経緯もあって取っ付き難いタイトルでしたが、蓋を開ければ純然たるSFで、癖の強い絵柄が直接的に脳に刺激を与えている危険な作品と言えます。

 だからこそ、やみつきになるような面白さを感じられる作品に仕上がっているのだとも思いますね。

 

最後に

 いかがでしたでしょうか。

 さて、とにかくこの『URAHARA』というアニメ、凄まじい引力を持ち合わせていて、普段の生活の中で、つい考えを巡らせてしまうくらいの存在感を発揮しておりますが、悲しいことにこの作品のポテンシャルに気付いている人は一握りに満たない気がします。

 間違いなく人を選ぶ作品ではあると思いますが、狂気を孕んだ怪作でして、玉石混合の中からこういった逸材を見出す時にこそ、僕はアニメ趣味の醍醐味を感じます。

 ここまで取り留めのない記事を読んでいただき、ありがとうございます。『URAHARA』に心を奪われた僕の想いの一端でも伝われば幸せに思います。

 

 話は全く変わりますが、どこを切り取ってもファンシーな絵柄で満ちている作品なので、見た目もカラフルでブログに貼付していて楽しかったです。

 残り話数も少なくなって参りましたが、最後まで気を引き締めて視聴したいです。